国土交通省が2025年7月29日(火)、令和6年度(2024年度)における都市鉄道の混雑率を発表しました。
混雑率がもっとも高い路線は、一般的な鉄道だとJR東日本の埼京線、東京メトロの日比谷線で163%、新交通システムなどを含めると、日暮里・舎人ライナーの177%です。
この結果を踏まえて、住むならどの路線の沿線がいいか、鉄道ライターの恵 知仁が、オススメの「ベスト3」を考えます。

各路線の混雑率一覧
まず最初に、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県)を走るJR、私鉄各線について、発表された令和6年度(2024年度)の混雑率を一覧でご紹介します。
この表を見れば、「各路線で一番混む区間」が分かります。基本的には、乗り換え駅やターミナル駅の前の区間が多いです。
混雑率の平均(主要路線31区間の平均)は、139%でした。コロナ前の令和元年度(2019年度)は158%で、翌令和2年度(2020年度)は107%まで落ち込みましたが、次第に戻ってきています。
表では、混雑率がこの平均以上の路線について、赤字で表記しています。
なあ「混雑率の目安」は、つり革や柱をつかめない人が出てくると100%ちょい、立っている人の肩がふれあわない程度が150%になります。
JR東日本
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
東海道線 | 川崎→品川 | 154% |
横須賀線 | 武蔵小杉→西大井 | 134% |
山手線(外回り) | 上野→御徒町 | 134% |
山手線(内回り) | 新大久保→新宿 | 139% |
中央線快速 | 中野→新宿 | 161% |
中央線各駅停車 | 代々木→千駄ケ谷 | 91% |
宇都宮線 | 土呂→大宮 | 117% |
高崎線 | 宮原→大宮 | 130% |
京浜東北線(南行) | 川口→赤羽 | 156% |
京浜東北線(北行) | 大井町→品川 | 153% |
常磐線 | 三河島→日暮里 | 138% |
常磐線(千代田線直通) | 亀有→綾瀬 | 123% |
総武線快速 | 新小岩→錦糸町 | 153% |
総武線各駅停車 | 錦糸町→両国 | 145% |
南武線 | 武蔵中原→武蔵小杉 | 153% |
武蔵野線 | 東浦和→南浦和 | 153% |
横浜線 | 小机→新横浜 | 137% |
根岸線 | 新杉田→磯子 | 73% |
五日市線 | 東秋留→拝島 | 97% |
青梅線 | 西立川→立川 | 93% |
埼京線 | 板橋→池袋 | 163% |
京葉線 | 葛西臨海公園→新木場 | 119% |
東武鉄道
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
東武スカイツリーライン(伊勢崎線) | 小菅→北千住 | 139% |
東上線 | 北池袋→池袋 | 129% |
東武アーバンパークライン(野田線) | 北大宮→大宮 | 105% |
初石→流山おおたかの森 | 97% | |
新船橋→船橋 | 119% |
西武鉄道
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
池袋線 | 椎名町→池袋 | 133% |
新宿線 | 下落合→高田馬場 | 145% |
西武有楽町線 | 新桜台→小竹向原 | 102% |
京成電鉄
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
本線 | 大神宮下→京成船橋 | 128% |
押上線 | 京成曳舟→押上 | 138% |
松戸線 | 前原→新津田沼 | 100% |
京王電鉄
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
京王線 | 下高井戸→明大前 | 143% |
井の頭線 | 池ノ上→駒場東大前 | 123% |
相模原線 | 京王多摩川→調布 | 101% |
小田急電鉄
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
小田原線 | 世田谷代田→下北沢 | 146% |
江ノ島線 | 南林間→中央林間 | 123% |
多摩線 | 五月台→新百合ヶ丘 | 76% |
東急電鉄
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
東横線 | 祐天寺→中目黒 | 122% |
目黒線 | 不動前→目黒 | 129% |
新横浜線 | 新綱島→日吉 | 54% |
田園都市線 | 池尻大橋→渋谷 | 133% |
大井町線 | 九品仏→自由が丘 | 112% |
池上線 | 大崎広小路→五反田 | 123% |
多摩川線 | 矢口渡→蒲田 | 107% |
京急電鉄
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
本線 | 戸部→横浜 | 118% |
相模鉄道
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
相鉄本線 | 鶴ケ峰→西谷 | 116% |
東京メトロ
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
日比谷線 | 三ノ輪→入谷 | 163% |
銀座線 | 赤坂見附→溜池山王 | 147% |
丸ノ内線 | 新大塚→茗荷谷 | 146% |
四ツ谷→赤坂見附 | 127% | |
東西線 | 木場→門前仲町 | 150% |
高田馬場→早稲田 | 110% | |
南北線 | 駒込→本駒込 | 152% |
有楽町線 | 東池袋→護国寺 | 145% |
千代田線 | 町屋→西日暮里 | 148% |
半蔵門線 | 渋谷→表参道 | 103% |
副都心線 | 要町→池袋 | 117% |
都営地下鉄
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
浅草線 | 本所吾妻橋→浅草 | 134% |
三田線 | 西巣鴨→巣鴨 | 144% |
新宿線 | 西大島→住吉 | 150% |
大江戸線 | 中井→東中野 | 155% |
横浜市営地下鉄
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
ブルーライン | 三ツ沢下町→横浜 | 131% |
グリーンライン | 日吉本町→日吉 | 116% |
中小私鉄・モノレール・新交通
路線名 | 最混雑区間 | 混雑率 |
---|---|---|
関東鉄道竜ヶ崎線 | 竜ヶ崎→佐貫 | 53% |
関東鉄道常総線 | 取手→西取手 | 65% |
流山線 | 小金城趾→幸谷 | 74% |
北総線 | 新柴又→京成高砂 | 95% |
東葉高速線 | 東海神→西船橋 | 89% |
りんかい線 | 大井町→品川シーサイド | 117% |
江ノ島電鉄線 | 和田塚→鎌倉 | 146% |
つくばエクスプレス | 青井→北千住 | 146% |
埼玉高速鉄道 | 川口元郷→赤羽岩淵 | 115% |
東京モノレール | モノレール浜松町→天王洲アイル | 84% |
多摩都市モノレール | 柴崎体育館→立川南 | 95% |
千葉都市モノレール | 千葉公園→千葉 | 151% |
湘南モノレール | 富士見町→大船 | 153% |
山万ユーカリが丘線 | 地区センター→ユーカリが丘 | 45% |
埼玉新都市交通ニューシャトル | 鉄道博物館→大宮 | 127% |
日暮里・舎人ライナー | 赤土小学校前→西日暮里 | 177% |
ゆりかもめ | 汐留→竹芝 | 96% |
横浜シーサイドライン | 新杉田→南部市場 | 119% |
住むならどの路線?【都市編】
さて、この混雑率の発表を受けて、「どの路線に住んでみたいか」についてです。
身もふたもないことを言ってしまえば、職場はどこか、遊ぶ場所はどこか、家族構成、身内の状況、趣味などを総合して考えるものなので、「混雑率」は大切なデータではあるものの、それだけで決められる要素ではありません。
なので「ベスト3」を、主観で書かせていただきます。ただ「主観」とはいえ、何らかの参考にはなる……といいなぁ、と思います。
ちなみに私は、「その街に住むという価値、ブランド」みたいなものは、あまり興味がないタイプです。
第3位
JR東日本の京浜東北線は、混雑率が南行(埼玉から東京へ)の列車で156%、北行(神奈川から東京へ)の列車で153%とだいぶ高いですが、東京駅、品川駅、上野駅といった東京都心部の東側を串刺しにして走るうえ、乗り換え路線が多数。
沿線は言うまでもなく発展しており、迂回できる並行路線もJR上野東京ライン(東海道線・宇都宮線・高崎線・常磐線)、JR埼京線、京急本線などが存在。私は旅行によく行くので、新幹線の駅や羽田空港、成田空港へ行きやすいのも魅力です。
ただ、混雑率がなかなかに高いこと、沿線の落ち着き的な意味では、気になる部分もあります。

第2位
JR東日本の中央線各駅停車――いわゆる中央・総武線各駅停車の御茶ノ水~三鷹間は混雑率が91%と、都心部を走る路線としては相当、空いています。
実際は、タイミングによってかなり混むことがままあるように思いますが、それでも他の路線と比較し、落ち着いているのではないでしょうか。
沿線は発展していて、新宿駅など都心主要部へ行きやすく、JR中央線の快速も利用可能。東京メトロ東西線直通列車もあるほか、東京メトロ丸ノ内線、京王井の頭線、西武新宿線など並行するように走る路線も多く、中央線各駅停車の運転が見合わせになっても、迂回しやすいです。

第1位
JR東日本の山手線は、混雑率が外回り(新宿→池袋方面)の列車で134%、内回り(池袋→新宿方面)の列車で139%と高いですが、特段にというほどではありません。
というか山手線は、東京都心部への行きやすさ、乗り換え路線の多さ、新幹線の駅や羽田空港、成田空港へのアクセスなどなど、総合的には最強ですよね。混雑するといっても、乗車距離はたかがしれてますし。都心部にいて何かあっても、最悪、歩いて帰れますし。
ただ「山手線の沿線に住む」となると、そうした交通利便性以外の面で、家賃や日常生活のしやすさ、住環境などなど、いろいろと難しい問題が発生するのが悩ましいところ。
世の中、うまい話はないものです。

住むならどの路線?【郊外編】
全体的に私は、旅行的な観点を含めて、鉄道や飛行機といった公共交通機関での「交通利便性」が高い路線を選ぶ傾向があり、正直、「混雑率」はそれほど重視していません。
ただ、交通利便性に優れた先述の「ベスト3」はいずれも都心近くを走る路線で、そこからあまり遠くない場所に暮らすことを想定しています。
だからこそ、混雑率をそれほど重視していません(長い乗車時間を想定していないため)。住む家も、広さは大切でなく、コンパクトにまとまっているほうが好みです。
しかし都心近くに暮らすことは、家賃や日常生活のしやすさ、住環境などなど、難しい点があるのも事実。
そこで、郊外で暮らすとしたらどの路線がいいか、「ベスト3」を主観で書かせていただきます。
第3位
JR東日本の東海道線は、混雑率が154%とだいぶ高いですが、品川駅、東京駅、上野駅といった東京都心部の東側を串刺しにして走る上野東京ライン、渋谷駅、新宿駅、池袋駅といった東京都心部の西側を串刺しにして走る湘南新宿ラインの両方を利用可能というのは、強いです。
沿線は言うまでもなく発展しており、横浜、川崎といった大きな都市も存在。買い物や遊びなどの利便性が高いのもポイントでしょう。新幹線の駅に行きやすいのも魅力です。
ただ、混雑率がなかなかに高いこと、沿線がだいぶ発展しており、人気も高いため、そのデメリットもあることが気になります。

第2位
JR東日本の高崎線は、混雑率が130%と平均以下なうえ、東海道線と同様に上野東京ライン、湘南新宿ラインの両方を利用可能というのは、強いです。
沿線は発展具合はそれなりで、大きな都市は大宮(さいたま市)ぐらいですが、自家用車の活用を考えれば、特段の問題はないでしょう。
そして、新幹線の駅に行きやすいほか、羽田空港アクセス線の開業によって羽田空港へ直通列車が走るかもしれないのもポイントです。
ただ、迂回できる路線がほぼないことが気になります。

第1位
JR東日本の宇都宮線は、混雑率が117%と低めなうえ、東海道線、高崎線と同様に上野東京ライン、湘南新宿ラインの両方を利用可能。
高崎線と同じく、沿線は発展具合はそれなりで、大きな都市は大宮(さいたま市)ぐらいですが、自家用車の活用を考えれば、特段の問題はないでしょう。
新幹線の駅に行きやすいこと、羽田空港アクセス線の開業によって羽田空港へ直通列車が走るかもしれないのも、高崎線と同様に魅力的。
そうしたなか宇都宮線は、高崎線より混まないほか、久喜駅から東武スカイツリーライン(伊勢崎線)、栗橋駅から東武日光線へ迂回できることが、ポイント高いです。
なんというか、「湘南新宿ライン&上野東京ライン最高!」というランキングになってしまいましたが。
グリーン車を連結しているのも、それは「選択肢がある」とも考えられるわけで、疲れているとき、体調が思わしくないとき、座って眠りたいときなど、助かります。
