
「将来が心配」「卒業させたい」――電車好きの子供にそう思う親御さん、そう珍しくはないようです。
正直その気持ち、分からなくはありません。
親として、どう考えたらよいのでしょうか。
電車好きの息子を持つ鉄道ライターが、個人的な見解をお話しします。
子鉄を「無事」卒業とは?
2026年のある日。
SNSを見ていると、「子鉄の息子、将来が心配」「電車好きでやばい」「電車好きをやめさせたい」的な投稿が目に入りました。
「子鉄を無事卒業」といった表現もありました。
「無事」ってそんな……と思いますが、質問サイトでもこれ系の話題が結構、あるようですね。
「『電車好き』をやめさせるいい方法はないか」みたいな。
なぜ「電車好き」をやめさせたいのか
親御さんはなぜ、そう考えるのでしょうか。
理由としては、「『鉄道ファン』『電車好き』のイメージが悪い」というのが、なかなかに大きいのではと思います。
一部の鉄道ファンが悪目立ちして炎上している光景、SNSでは珍しくありませんし。

「旅行好き」に擬態する鉄道ファン
もっとも、SNSやインターネットが普及する前から「鉄道ファン」「電車好き」の世間的なイメージは、良くはなかったと思います。
私が高校生、大学生だった平成初期、誰かと縁ができたときは「鉄道ファン」ではなく「旅行好き」として、まずは振る舞っていました。
ある程度仲良くなってから、「鉄道ファン」をカミングアウトする感じで。
この「『旅行好き』に擬態する」は、鉄道ファンのあるあるですよね。
つまり逆にいえば、「擬態しよう」と考えてしまうような状況だったわけです。「鉄道ファン」「電車好き」は、社会的に。
当時はオタク的な人を「キモい」として、その基本的人権を否定するような風潮、メディア上の扱いも強かったように感じます。

より悪化した「鉄道ファン」の印象
話を戻して。
平成初期やそれ以前において「鉄道ファン」「電車好き」のイメージが良くなかった理由は、「子供っぽい」「なにが面白いのか理解できない」「変人」「謎」的な理由が大きかったように思います。
何かが好きな人って、それに興味がない人へも熱心に語ってしまいがちだったりするので、それが先述のイメージに拍車をかけることもあるでしょう。
で、それから四半世紀以上を経た、現在のSNS時代。
一部の鉄道ファンが駅、線路脇のみならずSNSでも悪目立ちし、炎上し、それが繰り返されることで「社会不適合者」的な評価が加わりました。「鉄道ファン」「電車好き」のイメージに。
昔から「鉄道ファン」「電車好き」に対する社会不適合者的な見方は、大なり小なりあったと思いますが、それが動画や写真といった証拠付きでシェアされるようになり、誰の目にも明らかな形で、力強く歩き出していきます。
「愛する我が子にそんなレッテルがはられること、想像するだけで身の毛がよだつ……」
「子鉄を卒業させたい――」
そう思う方がいて何の不思議もないと、私は考えます。
「電車好き」にメリットはあるか?
「鉄道」は特に理科、社会の分野へ深く関わっているため、教育、学習的な面で役に立つことはあると思います。
私が高校受験をしたとき、超難関校として知られた筑波大附属か学芸大附属だったかの過去問に鉄道の時刻表を使ったものがあり、余裕で解けたことがあります。その問題だけは(笑)
また、同好の士と仲良くなって人脈や世界を広げられる、といった「趣味を持つこと」のメリットもあるでしょう。
あと私、スマホや携帯電話が普及していなかった時代は、「歩く乗換案内」としてクラスメイトから重宝されたことがあります(笑)
それはさておき。
このように「電車好き」のメリット、あることはあるといえますが、変なレッテルを貼られる可能性のデメリットを考えると、どうなのでしょうか……。
そもそも趣味は、ただ好きなだけだと、それでどうにかなるわけじゃないですからね(好きなだけで、もちろん良いのですが)。
能動的に深めていかないと、「メリット」と呼べるほどのものは得られないように思います。何の趣味でも。

鉄道会社に就職しやすい?
「電車好きなら知識や熱意があるから、JRや私鉄に就職しやすそう」的な考えは、いったん忘れたほうがいいです。
「鉄道ファンの知識」は、鉄道会社へ就職する武器にはならないでしょう。基本的に。
もちろん企業研究は必要ですが、鉄道会社が人材に求めるのは「鉄道ファンの知識」ではないように見えます。
鉄道好きの人が鉄道会社に採用される例はいくらでもありますけども、だいたいは、ほかに採用理由が存在しそうです。
また「鉄道」への深い愛情は、ときに、鉄道会社とのあいだに深い溝を発生させてしまいます。
このあたりについてはまた別の機会に、詳しくお話しできればと思います。
子鉄はやめさせるしかない?
つらつらと書いてきましたが、こんなものを読まされたら、親御さんの心配は増すしかありませんよね。
すみません。
しかし「子供の電車好きをやめさせるべきか」というと、私は反対です。
子供の「好き」を否定する行為は、いけないと思います。
子育て、人格形成的な観点から、逆に子供の「好き」、興味は伸ばしてあげねば、と思います。
また「電車が好きになりがちな気質・性格的なもの」も実在するように感じるので、そう考えると余計、無理、強制はダメだと思います。
子供を否定し、その自己肯定感を下げてしまう恐怖に比べれば、「電車好き」かどうかなんて些細なことです。

自然に減っていく「電車好き」
男の子には、電車好きが多いです。
しかし、自然と卒業していくことが大半です。
私の肌感ですが、男の子で電車が好きな割合は幼児で40~50%、小学校低学年で20~30%、高学年で10%、中学校で5%以下、高校、大学以降はもっと少ない、といった印象があります。
幼児の電車好きなんて、多くの子供が成長にあたって通る経路のひとつ、でしかないと思います。
まあ「電車好き」の程度もありますし、母集団によっても変わってくるでしょうが、電車好きの幼児が中学生になってもガチで電車好きな可能性は10%とか、そんなもんですよ。
私はその10%ですけども(笑)
ではどうすべきか?
子供の「電車好き」について私は、心配するより、まずは喜ぶべきだと思います。
何かに興味を持つことは、知的好奇心、思考力、行動力、健全な自己愛を育める絶好の機会です。
「電車好き」をきっかけに、子供をいろいろな所へ連れて行き、様々ものに触れさせることにより、子供の世界を広げ、成長をうながすことができます。
結果、子供が「電車好き」を卒業することもあるでしょうしね。
というか、子供は成長につれ世界や興味が広がっていくなかで、自然と「電車好き」を卒業するのかな、とも思います。
別に「卒業」しなくても
「電車好き」を卒業しなかったとしても、鉄道ファンが社会不適合者かというと、そんなことはもちろんありません。
例を挙げるとキリがないので、この記事を書いている最新のところで挙げると、2026年4月にANAの社長に就任する平澤寿一氏は国鉄の全線に乗ったほどの鉄道ファンとのこと。
ちなみにJAL社内にも、鉄道ファンは結構いるみたいですよ。
子育てにあたって、「電車好き」かどうかより大切なことが、きっとあるのだと思います。
