最初に断っておきますが、この記事では、185系電車について否定的と捉えられかねない表現があります。
しかし決して、185系電車やそのファンを否定する意図はありません。
185系電車と同じ時代を過ごしたオッサン個人の感想として、広い心でご覧いただけると幸いです。

グッとはこない185系の引退
特急「踊り子」や「新幹線リレー号」など、首都圏を中心に長らく活躍してきた185系特急形電車について、残っていた最後の編成が廃車回送されたと、鉄道コムが2025年6月21日(土)に伝えました。
これで国鉄の特急形電車がすべて引退したことになるので、「ひとつの終わり」は感じます。
なので寂しさはありますが、こみ上げるものがあるかというと、特段はないのが正直なところです。
私はこれまで185系電車に対し、憧れや、それに準じる感情を抱いたことはありませんでした。
その理由について、引退したいま改めて考えてみると、まあそうだよな、と思います。

185系と名古屋
185系電車が登場した1981年(昭和56年)3月当時、私は東京23区内に住んでいましたが、幼稚園の年長組だったので、記憶は相当、おぼろげです。
この185系電車に関する記憶で遡れるのは、それから1~2年後ぐらい、私が小学1年生か2年生になったころでしょうか。
名古屋市内に引っ越していた私はそのころ、国鉄東海道線に、なんかいい感じの新しい快速電車が登場していたことを知ります。117系電車「東海ライナー」です。

2人掛けの座席で、ドアが少ない特急みたいな電車へ、特急券なしで乗れるだなんて、これはスゴい、117系電車に乗りたい!……と、強く思うようになりました。
この117系電車と185系電車は、いわば兄弟車なんですよね。
名古屋市内に住んでいた小学生の私は、図鑑などで東京にも185系という特急形電車が最近登場していたことを知りますが、「117系電車の兄弟車」的なことも知るわけです。
117系電車と似た感じなのに、東京じゃあ特急券がいるのか……。
そう思った小学生は、185系電車に特段の興味を抱くことはありませんでした。
強力なライバルたち
また、当時の名古屋地区は名鉄「パノラマカー」が大活躍中で、1984年(昭和59年)には「パノラマDX」も登場。
小学生の私にとって、185系電車の比較対象は117系電車、名鉄7000系・7500系電車「パノラマカー」、8800系電車「パノラマDX」でした。2階建て車両がある近鉄30000系電車「ビスタカー」も、比較対象ですね。

こうなると185系電車の立場は、なかなかに厳しいものがあります。
185系電車は「新幹線リレー号」でも使われ、「なんか新幹線ができるまでの、まにあわせの車両」みたいな印象があったことも、関心を抱きにくかった理由として挙げられるかもしれません。
185系電車には185系電車の背景、理由があって登場しているわけで、単純に比較してどうのこうのは乱暴だ、というのは重々承知ですが、小学生にとってはそんなもんでしょう。
拍車をかけた国鉄の分割民営化
185系電車への興味が薄い状況に拍車をかけたのが、1987年(昭和62年)4月1日の国鉄分割民営化です。
JR九州のドアが中央にある783系電車「ハイパーサルーン」、JR東日本の“タキシードボディ”651系電車「スーパーひたち」、JR東海の“カミンズエンジン”キハ85系ディーゼルカー「ワイドビューひだ・南紀」など、JR各社それぞれに趣向を凝らした新型車両が登場しはじめました。

これら「国鉄」の枠を打ち破って登場したJR時代の新型車両は、多感な中学生時代を迎えていた私へ、憧れを与えてくれました。
いま思うと、国鉄の分割民営化、JR発足の時代は、「夢」が鉄道にありました。
……分割民営化を否定する傾きの教師が存在した覚えもありますが。
それはさておき、185系電車はこうした時代に流され、私にとって「そう古くないのに古い電車」になっていました。
当時、185系電車に対する評判について、いい話はほとんど聞いたことがないです。
「名車」かどうかはさておき
「三つ子の魂百まで」なのか、こうした子供時代の経験から、私は185系電車の引退について、「寂しさはあっても、特段はこみ上げてこない」ということになっているのかもしれません。
こうした経緯、時代的背景から、私の思春期に夢と希望を与えてくれた651系電車、キハ85系ディーゼルカーの引退のほうが、感情的にきました。
「中途半端」とよく評された185系電車。時代の波に翻弄された部分もあるでしょう。
この記事は「電車好きの児童→オッサン」という個人的な視点から主観的に書いているので、こんな内容、展開になってますが、仮に、185系電車が多くの憧れを集めてきた存在ではなかったとしても、客観的な研究の対象としては奥が深くて、かなり面白い車両だと思います。

最後に、なにやら言い訳じみてきますけども、2024年9月、奇しくも小学1年生(当時)の鉄道好きな息子と、JR東日本首都圏本部が主催したツアー「現役乗務員・駅社員と行く!! 185系回送ルートの旅」に参加しました。
鉄道に興味があるなら、「国鉄185系電車」は貴重な体験になると思ったからです。
息子がこれからも鉄道好きでいるかどうかは、心の底から息子の好きなように、と思っていますが、「国鉄185系電車」の体験が将来、機械、技術、歴史、社会などに関する興味、その素地につながれば、親として嬉しいです。
「鉄道」への興味って、そうした広い世界に触れるきっかけになると思いませんか?